【環境経済学ゼミ】生物多様性――部分の合計は全体にならない
今、名古屋ではCOP10が開催されています。各国の経済的な利害が対立してなかなかうまくいきませんね。今日は会議の行方はさておき、日頃このゼミで取り上げているテーマの観点から、生物多様性について考えてみました。
例えば、ある湖の生態系を考えてみましょう。この湖に生息している種の中で、ある魚が減少したとしましょう。経済に携わる人々は、この減少した魚の市場価値を計算し、経済価値が○○円失われたと言うでしょう。しかし、事はそれだけで済むのでしょうか。皆さんが知っているとおり、この魚は食物連鎖の一部を形成しています。この魚が死滅すれば当然これを補食する生物やこれに補食される生物も死滅し、最後にはこの湖全ての生態系が破壊されるでしょう。このように、一部を取り去っただけで連鎖的に崩壊するのですから、自然環境とは部分を合計したものではないし、逆に全体を分割すると部分になるわけでもないのです。にもかかわらず、現代社会に生きるわれわれは、自然を分割して商品を作って市場で販売し、お金の合計を増やすことに躍起になっているのです。
「部分の合計は全体にならない」「全体の分割が部分なのではない」という原理は、一個の生命や社会全体についても成り立ちます。ある企業が、経営が厳しくなったために給料をカットしたり人員を削減したりしたとしましょう。ある程度まで給料を削減することは可能でしょうが、あまりにも少なすぎると働く人々は食べることもできず、心身の消耗を回復できません。また、仕事を失った人々はさらに心身の回復の可能性を閉ざされることになります。これらは回り回って社会全体の体力や精神力の低下を招き、この企業自身の業績にも跳ね返ってくるでしょう。「金銭的には」給料のカットや人員の削減はいくらでも可能です。しかし、実物の人間を切り刻むと死んでしまうし、実物の社会を切り刻むと衰退するのです。
生物多様性の観点から経済が学べること、他にもたくさんあるかもしれません。
(ゼミ担当教員 山根卓二)
次回は【身体文化論ゼミ】です。
2010年10月28日(木) | 経済・経営コース


