【宗教と倫理ゼミ】動き出した中東
チュニジアに始まった民衆による政変が、エジプトに広がり長期に渡ったムバラク政権の崩壊に至り、現在リビアに及んでいる。いずれも民衆によるインターネット媒体を利用した運動が力となっている。中東をはるか離れた中国でも、民衆による同様の運動が起こらないようインタネット関係の接続を切るなどの予防措置を講じている。ネットが革命を起こすという流れは、世界的に今後もとどめることは誰もできないであろう。その意味で中国への影響は大いに注目されるが、目を中東に限定しても、政変が起こってしまった国々以外でも、どんどん連鎖反応が起こり、数年間は混乱が継続すると思われる。
湾岸戦争に始まる中東秩序の崩壊は次の段階に入ったと考えられる。アメリカによる力の行使により何が生じたかを世界は良く知っている。結局かき混ぜただけで、現場の事情を短期に安定にもたらすことはできなかった。同様にアフガニスタンでもタリバンの力の回復によりアメリカは第二のベトナムに近い現実に直面する可能性も濃厚である。
既成秩序崩壊後の政治的経済的安定にとって、この地域の無視できないファクターは宗教である。特にエジプトの政権の今後は、イラク以上に今後の世界情勢に大きな影響を与える可能性を濃厚に持っている。ムバラク政権の前のサダトの時代にエジプトはアメリカの肝いりでイスラエルとシナイ半島返還と莫大なアメリカからの持続的経済援助を条件に単独講和を行った。その後、サダトは暗殺されムバラクが政権についたわけである。
エジプトは、日本人にとっては、古代エジプトのピラミッドなどで親近感があると思われるが、現代世界において、観光資源以外に経済的基盤を所有せず、中東の産油国に出稼ぎ労働に出る以外にすべのない国なのである。その意味で、アメリカのプレゼンスはエジプトにとってかけがいのないものであり、その関係を維持することがエジプトの安定と繁栄につながる。
このアメリカがイスラエルを協力に支持しているのは周知の事実であるが、中東ではアメリカは嫌われ者である。イスラエルとアメリカに対する反感が、イスラム教内部の宗教的な宗派間対立と絡まって、イラク以上の混乱に陥れば、事態は重大な局面を迎えることになる。
日本人は、宗教問題に鈍いが、世界を見渡して、この問題について無知でいては未来を正しく切り開くことはできないであろう。
(ゼミ担当教員 伊藤利行)
次回は【演劇と身体論ゼミ】です。
2011年02月28日(月) | 歴史・言語文化コース


